甘い唇は何を囁くか
遼子の気が失せた。

まだ荒くも寝息を立てているのを確かめて、

宗眞はようやくその身体を解放した。

何度も吸い付いたから、首筋がうっすらと青くなっている。

ふっと笑って、シーツをかけてやる。

「は~、すっきり。」

そう呟いて、裸のままでリビングへと出て行く。

ガッ

その、瞬間。

喉を掴まれ身体が持ち上げられる。

締め上げられ、その殺意をちらりと見下ろす。

恐ろしい、恐怖を感じるほどの・・・。

思わず、その身体を蹴り、その手から逃れた。

げほっげほっ!

あの時の、人間のふりをして、声をかけたあの時の絞め方とは全く違う。

「こ、ろす・・・気かよっ」

掠れた声でそう言って、その顔を見遣った。

問うまでもない質問だ。

今まで、何人殺してきたのか。

冷徹な、冷ややかな殺意。

遼子、このおっさんのこと絶対勘違いしてるぜ。

こいつは、俺が考えてたよりも、もっと危険な男だ。

俺の裸を見て、心底憎く汚らわしいものを見る目つきをする。

そして、何も言わずに手を伸ばした。

「おっと!」

その手から逃れる為に、身体をくるりとバク転で反転させて立ち上がった。

こえ~~~

あの手にもう一度捕まったら、間違いなくヤられるね。

「遼子は、おっさんも承知の上で来たんだと思ったけど?」

そう言って首の後ろで手を組む。

「そ~んな、目で見られてもねぇ。」

溢れる殺意に、背筋がぞくぞくする。

地獄の鬼も卒倒するほどの低音で掻き消えるような声で言った。

「・・・黙れ。」

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