甘い唇は何を囁くか
殺意の色が濃くなって、失言だったかと苦笑する。

こいつはマジだ。

遼子をヴァンパイアに変えた後、俺は冗談抜きで殺られるかもしれない。

ま、十分生きたっつってもバラバラにされて燃やされて死ぬのはゴメンだ。

「…今は、殺さないでおいてやる。」

ヒシヒシ伝わってくる感情は、とても我慢してやるって感じじゃないけどな。

「それはどうも。」

「2度と、遼子に触れたら、許さん。」

そう言いおいて、背を向ける。

なるほど、顔を見てると堪えきれないってか?

「ハイハイ。」

遼子が求めてきた場合は、カウントに含まれないよな?

と聞くと、時待たずして死ねそうだったから、とりあえずやめておく。

本気のヴァンパイアの怖さは知ってる。

ましてや、こいつは俺より数百年長く生きた化け物だしな。

シスカがテラスに向かい歩き出した。

「あれ?遼子の顔、見てかないのか?」

背中で分かる。

その表情が翳ったことが。

なるほど、そうか…ま、そうだよな。

他の男とヤり疲れて寝てる、愛しい女の顔なんか…見たくないか。

俺は、嘲笑を浮かべてソファに腰掛けた。

シスカは、何も言わず消えた。

傷つき合う、男と女。

これからどうなるか…

「…楽しみだな…。」

そう呟いて、くっくっと喉を鳴らして笑った。
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