甘い唇は何を囁くか
結局立ち上がっても、バンビのようにクタクタで足に力が入らなくて、否応なく宗眞に運ばれてバスルームに向かった。

本当に腹立たしいくらいの満面の笑み。

シャワーを浴びてから、湯船に浸かる。

それから、ゆっくりと考えた。

宗眞とした。

と、いうことはこの身体の中にはヴァンパイアの毒、というものが入っているのだろうか。

感じる分には、何の変哲もない。

気だるいのは、きっと・・・のせいだろうし。

・・・シスカ・・・は。

遼子は、ゆっくりと自分の身体を見遣った。

あちこちに、宗眞の付けた痣が残っている。

あんなに私のことなんか「どうでもいい」くせにどうしてこんなことをするんだろう。

今度、・・・シスカにどんな顔をして逢えば・・・いいのだろう。

考えて、湯船の中に潜った。

逢いたい。

逢いたいよ。

けど・・・。

心と身体がばらばらに砕けてしまいそうだ。

どうしたら良いの・・・?

――――早く、ヴァンパイアになりたい。

早く、今夜の事を忘れてしまいたい・・・。


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