甘い唇は何を囁くか
「・・・じゃあ、遼子が目を覚ます前に、俺は・・・。」

そう言いかけて、背後に男の気配を感じた。

恐ろしい殺意に溢れた気配。

宗眞は、サッと腕を後頭部にまわした。

その瞬間、シスカの手が腕を掴む。

あぶねぇ・・・。

舌なめずりして、身を翻す。

反転した身体の真下にシスカの姿を確認して、はるか後方に着地した。

「ここで殺るつもりかよ。」

シスカの殺気に満ちた目が、こちらをちらりと覗く。

だが、すぐに苦しむ遼子の方を見向いた。

「遼子。」

と、心配そうに声をかける。

ちっと舌打ちして、宗眞は壁に背を預けた。

ま、遼子が目を覚ますまでくらいは、ここにいても大丈夫か。

おっさんも、遼子の前で俺を殺ることはないだろうし。

それから行っても間に合うだろ。

さすがに、自分が仲間に変えた女のことを、少しは気になる気持ちがあるのは確かだ。

暫くすると、遼子の苦痛の声が止まった。
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