甘い唇は何を囁くか
問いかけると、赤い目の男の人は、困惑した面持ちで見返してきた。

けど、すぐに少し哀しげに笑って呟いた。

「分かってたことだけど・・・。」

遼子は小さく首を傾げた。

何だろう、私、何か忘れてる・・・?

「遼子、大丈夫か?」

目の前の綺麗な人が、そう囁いて手を伸ばしてきた。

遼子は思わず身を引いた。

驚いた顔で伸ばした手を引き戻す。

「どうした?」

言った声は、すごく優しくて・・・何だか切なくなる。

けれど、遼子は強張った表情のまま言った。

「あなたも・・・誰ですか?」



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