甘い唇は何を囁くか
さっきまで、目の前が真っ白だった。

具合の悪さは半端なくて、吐き気か何か分からない苦痛に身を歪めていた。

それから、ようやく開放された。

―――かと、思ったら。

今度は、見たこともない男の人がふたり。

部屋の中で喧嘩を始めた。

物凄く、カッコいいふたり。

だけど、その空気は何だか異様で、何か、どこか不可思議なオーラを感じる。

そんなこと、思っている場合じゃない。

銀の髪の彼は、軽く赤い瞳の男の人を、持ち上げている。

殺してしまう―。

恐ろしいけれど、そう感じて叫んだ。

「やめてください!」

振り返った彼は、持ち上げていた男の人をぼとりと地面に落とした。

ああ、やっぱり信じられないほどの造形美。

こんな綺麗な人を見たことがない。

何て言ったら良いんだろう。

魔的・・・?

そう、その言葉がぴったりだ。
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