甘い唇は何を囁くか
「どうともぉ?」

シスカは牙を見せて続けた。

「いや、殺してしまいたい。だが、お前が怖がらないのが面白くないだけだ。」

宗眞は、ははっと笑った。

「なるほど。すみませんね、人間みたいに怖がってあげれなくて。」

「お前はいちいち俺を苛立たせる。」

ふんと鼻を鳴らし、遼子の姿を確かめた。

遼子は立ち止まり、額を押さえている。

それから汗を拭うようなそぶりをして、またふらふらと歩き始めた。

・・・

「見ろよ、あいつ。」

シスカが無言のうちに気付いたことに、宗眞がにまついて顎をさした。

分かっている

遼子は、前から来た若い男の後を追うように振り向いた。

「うわ、ゲキ色っぽ・・・。」

シスカの心の中が見えているように、その言葉を宗眞が呟く。

苛立って、宗眞を睨んだ。

「だって見てみ?あれ、女の顔してるぜ。」
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