甘い唇は何を囁くか
こんなことになるなら、海外に一人旅なんて考えるんじゃなかった。

そんな事をいまさら痛感したってどうにもならないのは、よく分かっているがそう思わずにはいられない。

神も仏もないものか―、震えながらいくら祈っても誰も助けはこない。

分かってる―。

ここは、そんなに生易しい国じゃない。

「そんな子供によく欲情できるものだな。」

遼子は涙を溢れさせながら、その声にびくりと身をすくめた。

押し倒された遼子の頭の上辺りで、男の気配がする。

どこかで聞いたような―。

「んだ、てめぇ。」

「うせろよ、お前には関係ないだろ。」

汚らしい言葉で二人はそう言い、遼子の身体をより深く押さえつける。

痛いほどに。

助けだろうか―、それとも仲間割れ…?

とにかく誰でも良い―この状況を打破してくれるなら、誰でも―。

「そのとおりだ。」

だが、返ってきた言葉はあまりにもムゲに吐き捨てられた。

「なんだ、てめマジで。どっか行けよ早くよぉ。」

(嘘でしょ~!?)と、頭の中で叫んだ。

けど、どう考えても助けに来てくれたという喋り方ではないのは確かだ。

「まぁ。気まぐれだが、そいつを放してやれ。」

「はぁ?!」

何だてめやるのかって、男たちは立ち上がり腕をまくった。

開放された遼子は素早く身を引き寄せて、破かれた服を手繰った。

顔を上げて、ようやく遼子の救世主の顔を見る。

遼子はハッとした。

この美しさ、神様も負けを認めざるおえないような神々しいきれいに整った顔立ち。

服を着ていても、その隆々とした肉体を隠し切ることはできないでいる。

分かる―。

こんな陳腐な男たちがどれほど束でかかっていっても勝てるわけがない。
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