甘い唇は何を囁くか
「もう一度…最後にもう一度だけ、抱きしめて。」

ユリーカの言葉に従い、シスカは固くいとしい女を抱きしめた。

この腕の中に閉じ込めてしまうように。

チクリ

首筋を何か針のようなものが刺したと感じた。

それと同時に、体中の血液という血液が逆流しはじめた。

「うっ!!!!」

苦しみに身体を震わせ、シスカはシーツを掴んだ。

「何だ…これは…っ!」

ユリーカはベッドからいつの間にか降りており、足元でシスカを見守るように見つめている。

問いかけに答える気配はない。

身体が千に千切れてしまうのではないかと思った。

細胞という細胞が分解し、シスカを粉々にしようとしているのではないかと。

「ユリー…カ…っ!!!!!」

悶えて、ドサリとシスカはベッドの上から落ちた。

ユリーカは駆け寄りたくなるのを懸命に抑えて、胸元を掴んだ。

「シスカ…。」

「ぐあっ、ぐあああああっっっっ!!!!!」

断末魔の叫び声を上げ、シスカはがくりと意識を失った。

足先から、震えが身体を昇ってくる。

ああ、シスカ…シスカ…。

貴方の声。

貴方が、私に言う「愛してる」をもう二度と聞くことができないなんて―。

思いたくはない。

「うう…ん…。」

ぶるぶると頭を振るい、シスカが身体を起こす。

ユリーカは祈るように手のひらを合わせて、シスカを見下ろした。

「何だ…どうしてこんなところで―。」

そう言って、こちらを…ユリーカを眼で捉えた。
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