ただしイケメンにかぎる。
それから、何かあるごとに、片桐君は私のことを苗字じゃなくて「麻子!」って呼んできた。

席替えをして1週間が経ち、男子漫画回しメンバーにも入った私は、片桐君がそう呼ぶからなのか、そのメンバーの男子には「麻子!」と名前で呼ばれるようになっていた。

「麻子ー、宿題やった?」
「蘭ちゃんの見せてもらってる!」
「マジかよ、俺が先に蘭に聞けば良かった…」
「麻子の次ね!」

なんて、蘭ちゃんと武田君の間を取りもてるくらい、席の近くの男子メンバーと心開けていた。

片桐君を除いては。

「え?俺もやってない!そんな宿題あったっけ?」
「片桐君も見ていいよ」

蘭ちゃんと片桐君の会話を聞きながら蘭ちゃんの宿題を写す。

このノート、片桐君も触れるんだ…なんて羨ましく思ってしまった。

「常田のだとタケの次だろ?麻子書いたら見せて?」
「えっ?いや、字が…」
「なんでもいーから麻子の見せて」

常田ってのは蘭ちゃんの苗字。

ってのは関係なくて、私のこんな字を片桐君が見るなんてあり得ない!!

「えー?あたしもやってあるよー?」
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