ただしイケメンにかぎる。
その日の放課後。

「ねぇねぇ麻子ちゃん。ちょっといーい?」

花房さんに呼ばれた。

「麻子!」

知奈美にも呼ばれたけど、きっと片桐君のことかなって思った。

「知奈美、先帰ってて?」

花房さんの後を追った。

2年6組の横は空き教室だった。

机の上に座る花房さん。

可愛い顔して悪いことするのもなんだかさすがだなって思った。

「麻子ちゃんさ、ヤスのこと好きなの?」
「へ?」

いつもと違う声色。

「あたしもね、ヤスのこと好きなの」

…知ってる。てゆーか付き合ってるんじゃないの…?

「ちょっとヤスが優しいからって勘違いしない方がいいと思うよ?」

…さすが強気女子。
でも、そんなこと言われなくてもわかってる。

「わかってる。私、あの顔のファンなだけだよ」
「え?」
「てゆーか、片桐君って、花房さんと付き合ってるんだと思ってたけど、違うの?お似合いだからそう思ってた!」

辛い…こんなこと言いたいんじゃない…

「あ、そーなんだ。そっか…そう見えるよね。ごめんねー」

花房さんの声が急に片桐君に向けているものに変わった。
この人も、あのイケメンを手の内に入れるために必死なんだ。
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