甘美な蜜のプワゾン
まるで敵意。

そういう類いの目付きに、ビビったりはしない。

極道一家の娘として、逞しく育ってきた蘭だから。
だが、不愉快に思うのとはまた別の話。

「あの、言っておきますが私じゃないですから」

何をと言わずとも右京という少年には分かったのか、眼鏡のブリッジを中指で押し上げながら鼻で笑った。

「どうだか。女は太郎を見れば直ぐに発情するからな」

歯に衣着せぬ言葉から、“女”という生き物を心底嫌悪しているようだ。

だからと言って何故ここまで言われなくてはならないのか。

失恋した挙げ句、次はまるで変態扱いと来た。

蘭はプルプルと震える拳を握りしめ、眦(まなじり)をきつく上げ右京を見据えた。

二人の間に火花が散る。

「あ、そうだ蘭ちゃん」

張り詰めた空気が一瞬で解けてしまう呑気な声に、蘭も「は!? ら、蘭ちゃん!?」と、すっとんきょうな声を上げた。
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