甘美な蜜のプワゾン
家以外での場所で、しかも学校で心が温まるなんて事今までなかった。

素直に感じた嬉しさに、蘭の表情は無意識に緩んでいた。

「もういいだろ太郎。早く」

「ん」

あまりにも急かす友人に太郎は苦笑し、踵を返した。

「じゃーね、蘭ちゃん」

後ろ手でひらひらと手を振る太郎に「ありがとうございます」と小さく溢した。

二人が見えなくなると、蘭は脱力したようにその場にしゃがみ込んだ。

「みかみたろう……太郎って……あの顔で太郎って、ギャップが凄すぎ……」

蘭は1人太郎の顔を思い浮かべ笑った。

その太郎のお陰で、失恋してしまった傷は早く癒えそうだった。
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