甘美な蜜のプワゾン
だが、3兄弟妹の中でたった1人の女の子の蘭も、父親によく似てとても美しい顔立ちをしている。

胸元まである漆黒の艶やかな髪、漆黒の瞳も全て父親譲り。

世間一般では忌み嫌われる極道だが、若頭として組長と共に組を支え、人情に重きを置き“家族”をとても大切にしている。

生まれた時から、そんな大きな背中を見てきた蘭は父親が大好きだった。

そんな父親を学生時代から支えてきた母親は、憧れと尊敬で蘭にとっては眩しい存在だった。

「そう言や蘭、学校はどうなんだ?」

稟はテーブルの上の灰皿で煙草を消すと、蘭の隣へと座って聞く。

「あ、うん。もちろん楽しいよ」

「……本当かよ」

兄に両脇から顔を覗かれ目が泳いでしまう。
2人を騙せるなんて端(はな)から思ってなどいない。

でも、相変わらず友達がいない、今日失恋しました、なんて言えるわけがなかった。
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