甘美な蜜のプワゾン
「本当だって! 今日もね——」

「嘘つくなや」

眉間に深いシワを寄せ、蘭の肩に逞しい腕を回してきた瑠偉。

これは蘭を逃がさないという枷(かせ)。

(ヤバいなぁ……。瑠偉にぃの目が据わってるよ)

救いを求めるように稟に視線を遣ったが、瑠偉と同じく怖い顔。

蘭に関しては異常なくらいに過保護になる2人。

「やっぱ、あんなヘボ学校じゃなくて、百蘭通った方が良かったんじゃねぇのか?」

「百蘭って……」

百蘭とは蘭の両親、兄2人が通った悪の巣窟(そうくつ)……不良高校だ。

父親と瑠偉はその百蘭高校でトップを張っていた。

人相の悪い男たちに囲まれるのは家だけでお腹一杯な状態の蘭にとって、百蘭は鬼門だった。

それに対して蘭の通う一華(いちか)学園は進学校としても有名な名門校で、不良と呼ばれるような人間は1人もいなかった。

そして何より一番の理由としては、やはり長年想ってきた隼人と同じ高校に通いたかった事が大きかった。

見事に玉砕したが……。

「一華は名門なんだよ? 通えてラッキーだし。校舎も綺麗で、何て言うのか生徒も品があるし……」

(いや、でも……約1名のせいで風紀がめちゃくちゃ乱れてるようですが……)
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