甘美な蜜のプワゾン
「きゃあー! 美上先輩だぁ」

突然騒ぎ始めた女子。

一斉に窓際へと押し寄せる波に驚きながらも、蘭はこの時初めて美上の名に反応して、窓の外へと顔を向けた。

「いやーん、今日も色気全開!」

「ヤバい鼻血出そう」

「エロ綺麗すぎる!」

「お願い抱いてぇー」

そう、これもいつもの事だった。

毎朝騒ぎ立てる女子がいたのにも関わらず、全く興味がなかった蘭は気にした事がなかった。

(そっか、太郎先輩のことだったんだ……)

大きな欠伸をして、眠そうに目を擦る無防備なその仕草に、学園内は割れんばかりの黄色い悲鳴が上がる。

(うわぁ……あれは確かに反則)

太郎の横はあの嫌味な男、右京が甲斐甲斐しく太郎のネクタイの位置を直してる。

その時、はたとクラスの女子の1人と目が合った。

「……」

妙な沈黙が落ちる。

「わぁ……。西園寺さんでも赤くなることがあるんだね」

「え?」

まさか話し掛けられるとは思ってなかった蘭は驚いた。
確か、この2組の女子をまとめている片岡 早苗だったかと、記憶から引っ張り出す。

「あ、ごめんなさい。その……何て言うか、いつも冷静な面しか見たことがなかったから、つい」
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