甘美な蜜のプワゾン
一華は進学校のため、生徒会長は2年生がする事になっている。

3年である右京は現在退いているが、何かと後輩からは頼られ未だに権限はあるようだ。

「まあ、右京にさえ見つからなければ大丈夫」

太郎は遊歩道をゆっくりとした歩調で歩き始めた。
自然と蘭も後について行く。

「ところで、蘭ちゃんは何でここに?」

肩越しに柔らかい笑みを向けて、蘭を見てくる。
まだ、じっくりと顔を見れるほどではないけど、金に近いその瞳は目が奪われる。

「実は太郎先輩を探してました」

「え? 俺を……?」

太郎は立ち止まると、一瞬眉をひそめてきた。
一瞬とはいえ、それが不愉快そうに見えたため蘭は焦った。

「いや、あの、昨日のお礼がどうしても言いたかったので」

「お礼って、俺何かしたっけ?」

頭に一杯の疑問符を浮かべてそうな太郎に、蘭は大きく頷いた。

「太郎先輩は何気なしに言ってくれた言葉だったと思うんです。それが、私にとってはとても嬉しかったので。その、ありがとうございました」

考えて紡ぎ出された言葉より、純粋な気持ちで言ってくれた言葉の方が、より蘭の心に響いた。
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