甘美な蜜のプワゾン
それにしてもと、蘭は右京の言動に少しの違和感を覚えた。
友人にしては、やけに過保護のようにみえる。

ネクタイを直す行為にしても、彼女ならまだしも男同士というのはかなり珍しいと言える。

(でも……友情にも色んな形があるのかもだしね……。人の事はほっとけって怒られそう)

一概に変だと決めつけるのもよくないと、蘭は湧いた違和感を振り払い、遊歩道へとおもいっきり飛んだ。

「痛っ」

飛び越える時に薔薇の棘が足の脛を掠めた。
少し引っ掻いたような痕があるが、血も出てないようで蘭はホッとした。

ケガをすると、家の者は過剰に心配するため、ケガをしないよう気を付けなければならなかった。

「はぁ……」

蘭は大きなため息を吐いて、遊歩道をとぼとぼと歩いた。
ため息の原因は、まだ身体に残る太郎の感触のせい。

昨日で太郎が引き締まった身体をしているのは、事故のような形で見てしまった為知っている。

だけど、抱き締められるとその逞しさがリアルに伝わり、腕の太さや厚い胸板が“男”を強く意識してしまったのだ。

ときめき云々(うんぬん)、女がいかに非力で弱いものなのかを実感せずにはいられなかった。

(いや、別に勝とうって思ってるわけじゃないんだけど)

< 33 / 68 >

この作品をシェア

pagetop