甘美な蜜のプワゾン
「奥は立ち入り禁止なのは知ってるはずだが?」

「はい。もちろん知ってます。すみません」

もう一度右京に頭を深く下げながらも、せっかく太郎が必死に守ってくれたのに、ふいにしてしまったことを蘭は悔やんだ。

「言い訳しないのか?」

「入ってしまった事実に変わりはないので」

「当然だな。しかし、言い訳しなかったことは誉めてやる」

「え?」

偉そうな口調が鼻につくが、思わぬセリフに蘭は目を見開いた。

「本来ならば罰則を与えなければならない。だが、何故か太郎はお前を隠した。だから太郎に免じて、ここは見なかった事にしてやろう」

「ほ、本当ですか?」

蘭は嬉しさで思わず顔が緩む。
ローズガーデンに入るとき、見つかった時の覚悟はあったが、やはり見逃してもらえる事に越したことはない。

噂によると、ペナルティは全校舎のトイレ掃除らしい……あくまでも噂だが。

「そのかわり」

「え?」

こうしてまともに対面すると、右京も相当綺麗な顔立ちをしているのが分かった。

華やかな太郎と並んでしまうと、その美しさも陰となってしまうが、その太郎の隣に立てるという誇りが右京から感じられる。
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