甘美な蜜のプワゾン
★three☆
右京から理不尽な要求を突き付けられてから早一ヶ月。

雨の多い季節が到来。
カッターシャツに水色のリボン、スカートは青のチェック柄。

制服は涼しげで爽やかに見える。


そして……太郎は朝の登校時しか見かけない。

何の接点もない太郎とは勿論関わる事もなかった。

それに対して何か思うわけでもなかったが、一方的な右京の態度はやはりいい気分はしなかった。

でも、一つだけいいことがあった。

「西園寺さん、教室戻ろー」

今日最後の授業、体育が終わり、一足先に着替え終えた片岡 早苗が蘭ににこやかに声を掛けてきた。

太郎がきっかけでクラスの女子とも少しずつだが、打ち解けてきているのだ。

「うん」

蘭は急いで着替え、早苗のグループに混じって教室に戻った。

グループの話題はファッションや太郎の事が多い。

太郎の話題に関しては、今日はどこどこで見かけたや、近くを通ったなど、まるでそれを競うかのように盛り上がっている。

その話題に積極的に加わる事はなかったが、女の子達の会話は聞いていて楽しいと感じる蘭がいた。

「美上先輩さっき帰ったらしいよ!」

「え!? マジ? 珍しく早くない? せっかく見れると思ったのに」 

「あ、西園寺さんバイバイ!」

「う、うん。バイバイ」

慌ただしく帰っていくクラスメイトを見送り、蘭は1人最後に教室を出た。
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