甘美な蜜のプワゾン
蘭はもう一度辺りを見渡してから、芝生へと視線を遣った。

しかし“それは”消える事なく蘭の目にしっかりと映り込む。

顔に雑誌を被せて寝ていた少年は、その雑誌を取ると、ゆっくりと上半身を起こした。

蘭は思わず目を見張り、息を呑んだ。

少しくせっけのある柔らかそうなミルクティー色の髪。

制服は何故か乱れており、カッターシャツのボタンは腹部まで外されていて、そこから覗く肌は硬質でとても引き締まっていた。

高い鼻梁に、男のくせに色っぽい唇。

恐ろしく整ったその顔立ちも含め、全身から漂う色香は高校生とは到底思えない程で。

セクシー過ぎるその妖艶なフェロモンに、彼を見た者は暫く見惚れてしまうだろう。

美しい人間に常日頃囲まれ、見慣れている蘭さえも口を開けて見惚れていた。

「ねぇ?」

気だるそうに髪を掻き上げ、甘ったるい声色で蘭に問いかける少年。

「っ!」

蘭は見惚れていた自分を恥じるように、熱を持った頬を叩いた。
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