甘美な蜜のプワゾン
美しいインペリアルトパーズの金の瞳。
魂まで奪われてしまいそうな程に……。

「太郎」

咳払いと共に、咎める右京の声。
そしてジロリと蘭を睨み付けてくる。

それはまるで“分かってんだろうな? あぁ?”という無言の圧力だった。

蘭は眉を少し寄せて、右京から目を逸らした。

太郎は大袈裟に肩を竦めてみせると、蘭から手を離した。

「……太郎先輩」

「ん?」

蘭が声を掛けると頭上では舌打ちが聞こえたが、それを無視する。

「駅どこで降りるんですか?」

「次」

「へぇ、先輩も結構遠いんですね」

「まあね」

そもそも先に声を掛けてきたのは太郎の方なのだ。

自分は何も悪くないと、蘭は軽く開き直っていた。

ちらほらといる乗客から注目され居心地悪い中、漸く電車は太郎が降りる駅へと近付いていた。

そして、車掌のクセのあるアナウンスの声が到着を報せる。

右京は降りる為に1人扉へと歩いていく。

だが……。

「太郎、何してる? 早く」

「太郎先輩?」

開いた扉には乗り降りする客がいる中、太郎は身動き一つしないで蘭の隣で何故か寛いでいた。
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