甘美な蜜のプワゾン
「っていうか、あの、その制服……なんでそんなに乱れて……」

蘭は失恋の瞬間を聞かれてしまった羞恥よりも、目の前の男の格好の方が今は問題であった。

「ん? あぁ……さっきまで女の子が乗ってたから……」

「の、乗ってた!? って何処に?」

「何処って、俺に。寝込み襲われたんだよ」

何でもないように少年は言うが、蘭は驚きを隠さず「寝込み!?」と叫んでいた。

「うん。って、あんた顔赤すぎじゃない?」

少年はしなやかに立ち上がると、猫のような身軽さで花壇を飛び越えてきた。

あっという間に蘭の前に立った少年は背が高く、ゆうに180センチは越えてるだろう。

彼の雰囲気に違わず、甘い香りが漂い、無意識に蘭は深く息を吸い込んでいた。

そんな変態じみた自分に蘭は慌てて首を振る。

「わ、私の顔の色なんてどうでもいいんです! それよりも寝込みを襲われたって大変じゃないですか!」

「なんで?」

不思議そうな声音で逆に聞いてくる少年に、蘭は一瞬思考が止まってしまう。
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