甘美な蜜のプワゾン
太郎が蘭の肩を掴み、後ろへ引こうとするが、蘭は毅然と首を振る。

「良くないです。こういう事はしっかりケジメもつけなきゃ」

「蘭ちゃん……」

蘭の揺るがない真っ直ぐな目に、太郎は圧倒されたように手を離していった。

「てか、今本人がいいって言ったんだし、良くね?」

「いいわけないでしょ。早く、今、私の目の前で消して」

女子高生にスマホを差し出すと、それを受け取った女子高生はニヤリと笑った。

その瞬間、一気に駆け出していく女子高生グループ。

だが、蘭は直ぐに隠し撮りをした女を捕まえる。

「蘭ちゃん!」

太郎も蘭へと駆け寄る。
他に逃げた女子高生は離れた場所で立ち止まり、様子を見ている。

「ちょっ離せよ! 触んじゃねぇよ!」

暴れる女子高生を、蘭は後ろから羽交い締めるように動きを封じる。

「聞いてんのかよ!?」

「消すまで帰すわけないでしょ。ほら、ちゃんと消して」

「お前、しつこ――」

「黙れや、この糞アマ」

低音響かせた声音を耳元で出された上、やたらと迫力ある蘭の声に女子高生は一瞬で固まってしまう。

「何度も同じ事言わせんな。一回言われたら一度で理解しろや。脳ミソ“一応”あんだろ? あ?」

女子高生は完全に怯えきった様子で、涙目で頭を何度も縦に振る。

蘭の周囲に吹き荒れるブリザードに、太郎と右京も一瞬固まってしまったのは言うまでもなかった……。


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