甘美な蜜のプワゾン
「なんすか、その野郎どもは! お嬢何もされてませんか!?」

「な、長瀬さん何故ここに?」

急いで駆け寄って来た長瀬は、蘭の全身をチェックし始める。

「何故って、少し遅いので何度も電話したんですが。出て下さらないので心配になって……」

蘭が無事だと分かりホッと長瀬は息を吐いた。

「え!? そうだったんですか? 気が付かなくてすみません!」

蘭は今更だが慌ててスマホを鞄から出してチェックすると、長瀬からの着歴オンパレード。

音を消していたから気付かなかったのだ。

「じゃあ、蘭ちゃん迎えが来てくれたみたいだし、俺らは帰るよ」

「か、帰るってとんぼ返りになるじゃないですか!? 家はもう、直ぐそこですので休憩でも」

「ありがとう。でも右京がなんか固まってるみたいだしさ……」

見ると右京はいかにもな長瀬の風貌に、固まってしまっている。

「お、おい、お前……。その男は何なんだ?」

「てめえ、お嬢に向かってお前とは――」

「長瀬さん!」

右京に掴み掛かろうとした長瀬を、蘭は慌てて止める。

「あれ? 右京、蘭ちゃんの事知らないのか?」

「知らない。お前が下で呼ぶ名しか知るわけがないだろう」

右京がやや困惑顔を見せる。



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