甘美な蜜のプワゾン
「はい……。あの無駄に綺麗な顔をした方ですが」

(無駄って……)

「太郎先輩の方ですね。それで?」

「お嬢とはどういったご関係で?」

質問を質問で返され、蘭は苦笑いをする。

「ご関係って……うーん……何だろう? ただの先輩、後輩ですかね。少し話すくらいの……」

自分で言ってても思うが、親しい間柄でもないのに太郎の言動は蘭にも良く分からなかった。

「……そうなんすか?」

これには長瀬も驚くが本当の事だから仕方ない。
蘭は頷く。

「そうですか……。実は奴とは中学が一緒でして。確か美上って名でしたよね?」

「はい、そうです。って、中学一緒だったんですか!?」

蘭は自宅である門扉の前で驚く。
自動で開いた門を2人が潜ると、また静かに扉は閉じられていく。

「はい、俺の1個下でして。その、顔つきがまるで違ったから直ぐに分からなかったんですけど、奴……中坊ん時はかなり荒れてましたから」

「……は? 誰が?」

「いや……ですから、美上が」

「……」

「……」

「え? マジっすか?」

驚き過ぎて蘭の言葉遣いもおかしくなる。

「はい。マジのマジです」

キリリと真摯な眼差しで訴えてくる長瀬。

長瀬は蘭の兄である稟とは百蘭高校で知り合ったと聞いたから、稟に聞いてもその事実は分からないかもしれない。
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