甘美な蜜のプワゾン
「今日は何するの?」

「うーん……まだ決まってないの」

今年40歳になるリリは、未だに20代に間違えられる程に若々しく美しい。

2人並んでも親子には見えない程だ。

困ったように悩む姿も、娘の蘭から見ても可愛いと思ってしまう。

あの氷のように冷たいと言われてきた玲が、骨抜きになってしまうのも分かるというものだった。

「何だか今日の蘭は複雑な顔してるわね」

「……うん。ちょっとね」

こういう些細な事も見逃さず、子供たちを気にかけるリリは、蘭にとっていつも心の支えとなっていた。

特に、蘭に女の子の友達が出来なかった辛さを一番分かってくれたのも、リリだった。

蘭は今日の出来事をはじめ、太郎の話をする。
リリはそんな娘の話に真剣に耳を傾ける。

何でも話してくれるのは、本当に嬉しいものだとリリも強く実感していた。


「あ、ハンバーグにしたの?」

「うん、煮込みハンバーグ。みんな好きでしょ?」

「うん、もちろん好き。でもそれってお父さんの好物じゃん!」

「フフ、バレた?」

買い物カゴには沢山の合挽きミンチ。
男3人ともなると、肉の量も半端ない。

何と言ってもリリの手料理はとても美味しいのだ。

そのせいで、ついつい食べ過ぎてしまうのが、思春期の蘭にとっての悩みの種となっていた。
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