甘美な蜜のプワゾン
「普通じゃないの?」

心底驚いた声音ながらも、さらっと尋ねる少年に蘭は唾を飲んだ。

自分の境遇にクラスメイトにも線引きされている。

誰も深く関わろうとはしない。

少し冷たい印象の綺麗すぎる蘭の顔には、特に女子からも敬遠されている為、友人と呼べる者は1人もいなかった。

入学してまだ1ヶ月弱だが、半ば諦めている自分がいるのも否定はしない。

「私の家が、やくざだからです」

だから、この少年がどういう反応をしても覚悟はあった。

逃げるなら逃げればいい。
誰も追うことはしないから……。

「やくざ……」

そう言って何かを考える顔付きで、少年は近くに設置されている白い猫脚ベンチに腰を下ろした。

「あ……もしかして、西園寺 蘭(さいおんじ らん)?」

蘭は驚いた。
切れ長のアーモンドアイはこの上なく大きく開いた。
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