ヴァンタン・二十歳の誕生日
遠くに船らしき物が見える。
必死にオールを漕ぐ。
でも行く手を遮るかのように何かが近づいて来た。
その背鰭に私は腰を抜かした。
(サメだ!)
恐怖のあまり私はパニックになった。
でもそれは良く見ると、イルカだった。
私達の行動を邪魔でもするかのように、イルカ達が遊んでいた。
「わぁーイルカだー!!」
思わず大きな声を出してはしゃいだ私。
(ヤバい! どうしょう、気付かれる)
そう思った。
(気付かれないようにこっそり行かなきゃ意味がない)
私は肝に命じた。
「シッ!」
私は人差し指を唇に近付け、イルカの群れを追い払おうとした。
その時だった。
イルカが一斉に暴れ出しボートはひっくり返り、船底を晒した。
私はチビを抱いたままで、それに這い上がった。
それを見つけたイルカが遊ぶ。
私は青白い顔を海に写していた。
バスルームでの水鏡が脳裏をよぎった。
(この暗示だったのか!? 引き込まれたら……。パパを助けに行けなくなる!?)
私は祈るような気持ちでイルカを見た。
イルカは図に乗ったらしく悪戯根性むき出しに近付いて来る。
(あれっ……? 十年前……転覆したっけ?)
思い出せない……
私は腕に抱えていたチビに気付いた。
チビはまだ眠っていた。
(えっ!?)
私は呆然としたまま、暫くそのまま固まっていた。
(そうだよね。急に起こされて眠いよね)
私は本当のお姉さんになったような心持ちでチビを見つめていた。
(もう駄目かも知れない)
そんな思いが脳裏をかすめる。
それでもヤケクソだった。
体当たりしてきたイルカの背鰭に手を伸ばした私。
でもそのお陰で、あの船の目の前に流されていた。
チビはまだ眠っていた。
でも本当は……
気を失っていたのかも知れない。
チビもやはりボートが怖かったのだろうか?
楽しい思い出。
だった。
お・ね・え・さんとの出逢い。
冒険。
それは、きっと楽しいことしか記憶して居なかったからなのだろう。
十年後の冒険に、出発させるために……
神様がチビに魔法を掛けたのだ。
そう思った。
イヤ違う……
チビは眠たかっただけなのだろう。
何しろ、この私に突然起こされたのだから。
必死にオールを漕ぐ。
でも行く手を遮るかのように何かが近づいて来た。
その背鰭に私は腰を抜かした。
(サメだ!)
恐怖のあまり私はパニックになった。
でもそれは良く見ると、イルカだった。
私達の行動を邪魔でもするかのように、イルカ達が遊んでいた。
「わぁーイルカだー!!」
思わず大きな声を出してはしゃいだ私。
(ヤバい! どうしょう、気付かれる)
そう思った。
(気付かれないようにこっそり行かなきゃ意味がない)
私は肝に命じた。
「シッ!」
私は人差し指を唇に近付け、イルカの群れを追い払おうとした。
その時だった。
イルカが一斉に暴れ出しボートはひっくり返り、船底を晒した。
私はチビを抱いたままで、それに這い上がった。
それを見つけたイルカが遊ぶ。
私は青白い顔を海に写していた。
バスルームでの水鏡が脳裏をよぎった。
(この暗示だったのか!? 引き込まれたら……。パパを助けに行けなくなる!?)
私は祈るような気持ちでイルカを見た。
イルカは図に乗ったらしく悪戯根性むき出しに近付いて来る。
(あれっ……? 十年前……転覆したっけ?)
思い出せない……
私は腕に抱えていたチビに気付いた。
チビはまだ眠っていた。
(えっ!?)
私は呆然としたまま、暫くそのまま固まっていた。
(そうだよね。急に起こされて眠いよね)
私は本当のお姉さんになったような心持ちでチビを見つめていた。
(もう駄目かも知れない)
そんな思いが脳裏をかすめる。
それでもヤケクソだった。
体当たりしてきたイルカの背鰭に手を伸ばした私。
でもそのお陰で、あの船の目の前に流されていた。
チビはまだ眠っていた。
でも本当は……
気を失っていたのかも知れない。
チビもやはりボートが怖かったのだろうか?
楽しい思い出。
だった。
お・ね・え・さんとの出逢い。
冒険。
それは、きっと楽しいことしか記憶して居なかったからなのだろう。
十年後の冒険に、出発させるために……
神様がチビに魔法を掛けたのだ。
そう思った。
イヤ違う……
チビは眠たかっただけなのだろう。
何しろ、この私に突然起こされたのだから。