愛し過ぎて、
第一章

17歳

やさしい風が吹いた。
どことなく、春を感じさせるにおいがする。


迎えに来ていた優馬が「遅い!」と、声を少し尖らせて言った。
「おはよ」と、声をかけると、優馬も笑って「おはよ」と、返してくれる。
朝の定番会話だった。


当たり前のように繰り返される日々。
まるで、誰かに操作されるようにして生きる中
たまにくれる神様からのイタズラが、俺たちの生きがいだった。
高校2年生になった初日にも、神様は俺にイタズラをくれた。


―俺の運命を変えるほどの。



朝の暖かい日差しが体にまとわりつく。
眠たい目を擦りながら学校へ向かう。

「なぁ逞、今日転校生が来るらしいぜ。しかも女子!どんな子だろ思う~?」
めちゃくちゃうれしそうに優間は言った。

俺は、目をキラキラと輝かせている優馬を軽くたたき、
「お前には大崎がいるだろ?あんまりニヤニヤしてるとまた殴られるぞ。」
と、軽い忠告。

優馬は少し照れたように笑いながら
「綾女は別格だから」
と、答える。
さっきの笑顔とはまったく違う、最愛の人を思ってのやさしい笑顔だった。
俺には無縁なんだと思うと、ちょっと虚しくなった。


「逞はさ、彼女ほしいとか思わないわけ?」
優馬にいわれ、答えに少し詰まった。


俺だって、彼女が欲しいと思わないわけではない。
ただ、人をどうやって愛していいのかが分からないんだ。
恋をした時の、あの息が詰まるような衝撃を、受けたことがないんだ。

俺は「そのうちな」と、優馬に答えた。
「逞、あんなにモテるのに彼女作らないなんて、モテない童貞野郎に対しての嫌味じゃねーのか?」
「残念ながら、俺も童貞だ。」
その答えをきいて、優馬は満足そうな顔をする。
「優馬、バカにしてんのか?」
そういって、優馬のセットされた髪をグシャグシャにしてやった。
「あ!俺の髪がー!」
と、騒ぐ優馬を横目に、ふと、転校生の話を思い出した。


転校生ってどんなヤツなんだろう?
ちょっと期待してみようか…
とか言って、ブスだったら最悪だよな。

少し期待しながら学校までの道のりを歩いた。

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