MOONLIGHT【番外編~ウエディング、新婚旅行!?編】
【おまけストーリー】君との出会い
「っっ!?・・・・・・チッ。」
ページをめくろうと指を動かした途端、ピリリとした痛みが走り。
右の中指の腹に目をやるとぷっくりと赤い筋が盛り上がっていて、思わず舌打ちが出た。
パタン、と音を立てて台本を閉じれば、木村さんが眉をひそめて俺を見た。
こんな物に当たり、他人を不愉快にする態度は自分でもどうかと思う。
普段の俺ではありえない。
「・・・はぁ・・・やっぱ、この仕事断ってもいいんだぞ?大体、顔合わせの席でいきなり役柄変更なんて言い出されて、ハイそうですかって大人しく聞くことなんてないし。常識じゃ考えられないことだからな。断る理由は充分あるぞ?」
「・・・・・。」
「将、それぞれのキャラクターってものがある。この仕事を断るのは決して恥じゃない。大体お前は周りに合わせすぎる。周りに迷惑がかかるからって、自分の負担を考えないときがある。確かに、自分の我を通しすぎて周りに迷惑をかけ過ぎる人間が近くにいるから、返って気を遣うんだろうが・・・真面目すぎるのも、ほどほどにしないと・・・ストレスばかり溜まって、結局はいい芝居ができないぞ?」
「だけど、藍崎さんは仕事は断らない。だから、俺だけ降板するなんて・・・死んでも言えません。」
木村さんがもっともな意見で、俺に助け船を出してくれているのはよくわかっているけれど。
だけど、変更された役柄が演じられないから降板するなんて、俺のプライドがどうしても許さない。
唇をかみしめる俺を、木村さんは呆れた目で見ると、またため息をついた。