MOONLIGHT【番外編~ウエディング、新婚旅行!?編】
振り返ると、美景の姿はもうなかった。
「うそ、だろ…?」
俺は、ヘナヘナと便座に座りこんだ。
さっきまで昔のように話をしていた美景は、どこにもいない…。
だけど。
耳元で声がした。
「早くいかないと、あのバカ本当にバージンロード歩くわよ。レイと歩きたくってしょうがないのよ、アイツ。」
その声に。
「だめだっ!!典幸!!それだけはダメだぞ!!レイは俺の娘だ!!お前はただの兄だ!!」
そう言って、1時間数十分閉じこもり続けた個室から飛び出した。
そこには、ため息をつく、愚息典幸。
何故か携帯電話中らしい。
「はあ。やっと出てきた……レイ、やっぱり、お前の言う通りバージンロードの事持ち出したら、すぐ出てきたぞ。さすがだなー。」
な、何だとっ!?
レイにまで俺が個室に閉じこもっていたことを話したのかっ。
「典幸…おまえ…。」
まあまあ、と言いながらとにかく時間ないから、と言われ待機場所に誘導される。
歩きながら典幸が、俺の顔を見た。
「レイ、スゲー綺麗だったぞ。なんか嫁にやるのが惜しくなったし、中川のやつのこと思い出してまた腸が煮えくりかえった。」
中川か…。
俺も怒っていたが、典幸の怒りも相当なものだったな。
結局、中川に対して典幸はまだ許していない。
数年たって落ち着いた頃にまた仕返しをするつもりでいる。
今やるとレイが疑うから、直ぐには手出しはしないと言っていた。
どうせ、青山のせがれが入れ知恵をしているんだろうが。
そんな、数年後なんて甘いことをいっていないでとことんつぶせばいいものを…。
『そんなこと、レイがしったら今度こそ、縁切られるわよ。』
頭のなかで、美景の声が響いた。
え…本当にそばにいてくれるのか。
『まあ、今日は特別。それより、もうあの中川ってコには手をださなくていいから。』
そんなこと言ったって、怒りがおさまらないんだ。
『うん、だから。きっちり、おとしまえつけておいたし。』
は?
『ふふ…夢枕にたってやったわよ。それで、呪いをかけておいたから。多分、これであのコ結婚はおろか一生女とは付き合えないと思う。ふふ…。』
ええっ!?
一体何やったんだ!?
『え、知りたい?…別に知りたいなら言ってもいいけど…。』
い、いやっ、止めておく!!
あまり、聞いてもいい事のない気がするし!!