MOONLIGHT【番外編~ウエディング、新婚旅行!?編】
扉の前で待っていたレイは。
息をのむほど美しかった…。
「お父さん、遅い。」
でも、口から出るのは不機嫌な声。
多分、照れくさいんだろう。
「…レイ。綺麗だ。」
「そりゃ、どうも。」
「…レイ。おめでとう。」
「はい、ありがと。」
「…レイ。幸せになれ。」
「わかってる。」
「…レイ。欲しい物があったら何でもかってやる。」
「ないし、そんなもの。」
「…レイ。嫌になったら、いつでも別れろ。それで、俺のところで暮らせばいい。」
「めでたい日に、縁起でもないこと言うな。」
「レイ…。レイ……。」
俺が感極まって、涙をこらえられなくなったら、レイが大きなため息をついた。
そして、不機嫌に顔をそむけた。
あ、うっとおしいと思われたか…?
そうだよな、こんな泣いてばっかりじゃ、がっかりだよな…。
そう思って、がっくりうなだれたが。
よく見ると顔をそむけたレイの頬が赤い?
「……別に将と別れなくても、実家に帰っていいんでしょ?…つまり里帰りってやつ。典幸こき使って、私ゆっくりできるし。ちょくちょく帰るから…。で……なんだ、えっと…いままで意地張って、我儘勝手ばかりしてたけど…そ、そ、そ、育ててくれてありがとう…お父さん。これからも、元気で…お母さんの分まで長生きしてよ…。」
そ、そんなことっ!!
今言うなんて反則だーーー。
もう、もう、涙が…。
『いつまでも、グダグダ泣いてやがると、ヤキ入れっぞ。あぁ″っ!?』
頭の中で、美景の若い頃にとった杵柄の巻き舌、ヤンキー口調が響き渡った。
美景は、やるといったらやる女だ。
現に、中川が女性に対して再起不能になったらしいし…。
あまりの恐ろしさに、一瞬にして俺の涙は引っ込んだ。
その瞬間、厳粛な曲が流れ、扉が動いた。
気がつけば、レイの手が俺の腕に絡まっていた。
扉が開いて、温かな拍手と、ライトが俺とレイを迎えてくれた。
そして。
『辛気くせー顔すんな!シャキッとしろ!!』
もう一度、巻き舌が頭の中で響いた。
相変わらず、美景は恐い…。
はあぁ。