MOONLIGHT【番外編~ウエディング、新婚旅行!?編】
★瀬野将のため息③
扉が開いた。
その瞬間、何も聞こえなくなった。
そして、たった一人の愛しい俺の運命の女しか目に入らなくなった。
はあぁぁ。
なんて。
なんて。
美しい…。
早く、早く…早くあの手をとりたい。
そして、ずっと。
ずっと、ずっと…。
あの手を離さないで。
幸せにするんだ。
レイのオヤジさんに伴われて、レイが俺の前にやってきた。
さすが、世界に名だたる大企業の会長だけある。
最愛の一人娘を、嫁にだすのに落ち着いてレイをエスコートしている。
器の大きさに脱帽だ…。
「レイを…頼んだぞ?」
そう言って、レイの手を俺に渡した。
俺は、胸がつまって、ただ深く頷くだけしかできなかった。
この手にした、レイは。
愛おしくて…。
愛おしすぎて。
思わず、抱きしめてしまった。
「幸せに…絶対に、幸せにするからっ。」
感極まってしまって、涙が出てきた。
ぎゅうっ、とレイを抱きしめる。
だけど、レイが。
「イヤ、盛り上がってるとこ悪いけど、神父様待たせてるし。」
落ち着いた声で、俺に突っ込みを入れた。
参列者全員がドッと笑う。
くそう。
笑うな!!
そう思い、参列者を睨みまわす…って、あれ?
あの人。
皆から離れ、一番後ろの席。
ブルーのドレスの女の人。
目が合うと、俺に手を振ってきた。
な、何なんだ?
俺の方の関係者じゃない…とすると、レイの方か?
って、何で俺気がつかなかったんだ?
だって。
あの人…。
レイにそっくりだ…。
ぐいっ。
気がつくとレイに腕を引っ張られて、神父様の前に引きずられるようにして連れていかれた。
ゲラゲラ参列者が笑う。
まずい、此処は夫としてリードしないと。
俺は、腹に力を入れ、式に集中した。
誓いの言葉も。
リングの交換も。
滞りなく進んだ。
そして、誓いのキス。
レイのベールを上げる。
絡みあう瞳。
レイの瞳が俺を見つめる。
ずっと、その瞳が俺を見つめ続けてくれますように…。
そう願いながら、レイに顔を近づけた。
その時。
『オイ、誓いのキスで、舌なんか入れやがったら、ぶっ殺すぞ!!』
突然、頭の中で巻き舌風の柄の悪い声が響いた。