MOONLIGHT【番外編~ウエディング、新婚旅行!?編】
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「だけどよー、さすがの将君も本物の結婚式では余裕なかったみたいだなー。」
戸田さんが、ゲラゲラ笑いながらスコーンをつまんだ。
「そうよねー、ドラマや舞台、映画では結婚式なんて将君にとっては珍しくないものねー。」
北村さんがポットから紅茶を注いでくれた。
なんだよ、皆で…何も知らないで…。
「私は、慣れた将よりも、余裕がないっていうか今日みたいに必死な将でよかったわ。本当に、いや…本物の結婚式が初めてって心から思えたし。」
レイが、抑揚のない声でそう言った。
抑揚がないからって、感情がないわけじゃない。
たぶん、照れ隠しだろう。
それより、レイの素直な気持が嬉しい。
「レイ…。」
手を握った。
レイの口元が少しゆるむ。
戸田さんが、ハイハイいちゃいちゃは後でねーと、じゃまをする。
くそう。
「だけど。レイよかったな…本当におめでとう。」
葉山さんが目じりに涙をためながら、レイに優しい目を向けた。
「典幸…。泣かなくてもいいでしょ。」
そっけないレイの言葉だが、鼻の頭が心なしか赤い…。
「いや…美景さんもきっと喜んでるよ…うぅっ…。」
そう言って葉山さんが懐から取り出した一枚の家族写真…。
はぁ。
嘘だろ?
そこには小学生のレイを膝に乗せた大学生くらいの笑顔の葉山さんと、仲のよさそうな歳の離れた夫婦。
男性の方はレイのオヤジさんで。
女性の方は…あの、さっきのブルーの女性。
レイにそっくりだ…。
多分、あの…誓いのキスの直前に頭の中で響いた声の主も…。
ああ、確か若い頃は随分悪かったようなことをいっていたな…。
多分結婚式だから出てきたんだろうけど。
まさかな…。
これからも…ってことは…ない…。
いや、ありえるかも…。
はぁぁぁ。
誰かが言っていた。
結婚って自分たちだけのことではなくて。
家族が増えることでもあるって。
だからって、幽霊も?
はあぁぁぁ。
【 ウエディング編~ため息のゆくえ end 】