MOONLIGHT【番外編~ウエディング、新婚旅行!?編】
勿論、日本のマスコミもやって来た。
だけど、この映画祭は権威のあるものらしく、プレス規制が激しい。
だから、3社しか入れず、しかもインタビュアーも随分キチンとした人だった。
いや、あんまり私テレビを見ないから、インタビューアーの顔も名前も知らないし、ただ見た印象だけの話だけど。
「げ、徳井さんだ…。」
将が、そう言って嫌な顔をした。
視線の先には50歳前後の綺麗な女性。
聡明な印象の人。
他に40代くらいの男性と30歳前後の女性。
キチンとドレスコードに従った服装をしている。
日本のマスコミなので通訳は勿論必要ないから、私は画面から外れるように将から離れようとした。
だけど、将は繋いでいる手をグイ、と引っ張り、離してくれない。
結果的に私までインタビューを受ける事になってしまった。
「NNCテレビから参りました徳井です。宜しくお願い致します。」
将が、身構えた相手…徳井という女性が頭を下げた。
私も下げる。
「初めまして。瀬野レイです。宜しくお願い致します。」
瀬野と病院や大学でも名前を変更したから、名乗るのも慣れた。
他のインタビュアー2人にも同じように挨拶をする。
その様子に徳井が少し驚いた顔をしたが、木村さんができたら15分ほどで終わって欲しいと要望を出したので、直ぐに取材となった。
「この度のノミネートに対して、どういうお気持ちですか?」
男性インタビュアーが聞いてきた。
「感謝しています。」
将が、いつもの大人キャラで答える。
「ズバリ、今回賞を取る自信はおありですか?」
徳井でない方の若い女性インタビュアーが問うた。
「さあ。」
答え短っ。
本当に将は、本来の将とキャラが違う。
インタビュアーも言葉が少ないので、戸惑いぎみだ。
「出国時の空港での事が、大きく日本で報道されていますが、奥さまはいつも厳しい方なんですか?」
突然、関係のない質問を徳井が私に向けてきた。
日本からの連絡で、空港での騒動が取り沙汰されていると木村さんから聞いていた。
どうやらあの西村という、レポーターの非常識な態度が反感を買い、槍玉に上がっているらしい。
そんな大袈裟な話ではないのに。
「基本、レイは寛大です。ただ、自分より弱い物に対しての仕打ちや、人に迷惑をかける事については、はっきりと意思を伝えますが、それが厳しいことなんでしょうか?」
将の言葉数が増えた。
まだ大人キャラだけど。
「でも、西村さんは今非常に厳しい状況に置かれています。あの時確かに彼女はやり過ぎなところはありましたが、奥様が一言質問に答えれば、こんな事にならなかったのではないですか?」
成る程、将が身構えただけはある。
とても辛辣だ。
だけど、理屈はあっている。
将が、答えようとしたが、私が制した。
「今のご質問、私が答えてもよろしいですか?」
「勿論、お願いします。」
中々の強者だ。
筋金入りの笑顔で、頷きやがった。
「レイ…。」
心配そうに見る将の手を握る。