MOONLIGHT【番外編~ウエディング、新婚旅行!?編】
「ホント、レイらしいよなー。何かその時の状況が目に浮かぶな。」
ゲラゲラ笑う将。
いつものキャラと違いインタビュアーが戸惑いぎみだ。
「せ、瀬野さん。何だがリラックスされてますね?」
言いようがないのだろう、今の将をリラックスと表現した。
すると将はにっこり笑った。
「実際、まだ実感はわかないんですけど。レイがいつもの調子なんで、俺もどこにいようが、このとおりなんです。特別なことはない、ただ、本当にこの機会を与えてくださった方々に感謝の気持ちだけなんです。」
将はしみじみとした感じでそういった。
とてもよい表情だと思った。
取材はどうにか映画祭のことに話がもどり、最後はいい感じで終わった。
結果的に私が売名行為でないと、いや、本当にちがうんだけど、わかってもらえた雰囲気だった。
私と同じモデルクラブだったというインタビュアーの沢田さんと、男性インタビュアーにお礼を言った。
そして。
「徳井さん。」
将が、徳井に話しかけた。
それは、完全にカメラも無くなり、周りに人がいなくなったのを待ってから声をかけたようだ。
ニヤリと笑い、徳井が近づいてきた。
「わざとでしょう?こういうことは先に言って下さいよ。俺、ちょっとキレぎみの表情がでちゃったし。あいかわらず、意地がわるいな。」
将にしちゃ、随分なことを言っているが、徳井と親しいのだろうか。
まるでサロンメンバーに話しているようだ。
あ、それにキャラ…いつもの将だ。
マスコミ相手にいいのだろうか。
「あら?バレた?だって、将君無口キャラ通してインタビューも面白くないし。結果的に盛り上がって、将君の大事な奥さんの売名行為も疑い晴れたみたいだし。結果オーライでしょ?」
そう言笑う、徳井。
え?
インタビュー中のクールな表情とは違って、随分と柔らかな…っていうか、くだけた表情だ。
私がぽかんとしていると、将がクスリと笑って、私に説明をした。
「徳井さん、ムッシューの奥さんなんだよ。」
ムッシューって、あの関西弁の滑舌がいい……。
「えぇっ!?そうなんですか?」
ちょっと驚いた。
「うん。だから、レイの事もムシューから聞いていると思うし、徳井さんはハナっからレイが売名行為なんて思ってないから。てゆうか、ムッシューに言われて、売名行為疑惑を晴らしてくれたんでしょ?……俺、最初騙されてけど、さっきのレイをかばってくれた沢田さんが『シェリル』所属だったって聞いて、わかったし。」
「え、そうなの?」
何でわかったんだ?
「うん、だって『シェリル』の社長と徳井さん友達だし。ぜったいレイのことわかっただろうし。」
「えっ、そうなんですか?社長と?」
「ええ、中学高校の同級生なの。」
世の中は狭いな。
変なところで、つながりがある。
「そうですか、でも助かりましたありがとうございました。」
面倒くさいことにならなくて本当によかった。
徳井さんの話術で、結果的にわざとらしくなく否定できたし。
将の感謝ものべられた。
やっぱり、この人、凄い人だ。
心から感心した。
あ、そうだ。
せっかくだから私もインタビューをしてみよう。
「すみません徳井さん、私もちょっと聞いていいですか?」
「何?」
「国際結婚って、大変じゃないですか?」
そうだよね、ムシューって、見た目日本人だけど。
「は?」
「ぶっ。」
徳井の怪訝なリアクションと将が吹き出すのが、ほぼ同時だった。
将はお腹を抱えて笑っているし、徳井は大きく呆れたようにため息をついた。
「彼がいった通りね、こんなに世間に疎いんだもの、売名行為もなにもないわね…。」
「くくっ…。そうでしょ?徳井さん。俺と結婚を決めた時、レイは俺のことヤクザだって思ってたくらいだから、あはは…そうだ!思い出した!週刊誌記事に載った自分に、自分じゃないと思って焼きもち妬いたし…本当にレイって…うっ。」
バカにする将に、腹にパンチを入れた。
高校時代にボクシング部だった典幸にボディーブローを教えてもらっておいてよかった。
もちろん、手加減はしたけど。
徳井がクスクス笑う。
「あのね、彼はれっきとした日本人よ。ムッシューは、芸名なの。第一、あんなフランス人いたら嫌でしょ?」
何だ、それなら早く教えてくれよ。
まったく。
だけど、ムッシュー、酷い言われようだな。
てゆうか、絶対家庭内で、徳井さんの方が強いだろうな。
何か想像できるかも。
「だけど、将。よく『シェリル』の社長を知っていたね?あそこの事務所って、モデルオンリーで、ドラマとかやらないでしょ?接点なんてあんまりないんじゃない?」
ちょっと疑問に思ったことを聞いてみた。
まあ、将は子供の頃からのキャリアだから、顔が広いのかもしれないが。
だけど、私の質問に将が一瞬、つまった。
ん?
何だ?
妙な間があいて。
徳井がゲラゲラ笑い出した。
「そりゃ、昔、『シェリル』の女の子達と将君随分、お付き合いがあったからよねー。」
「と、徳井さんっ!?」
焦る将。
そして、無言の私。
「・・・・・。」
ふーん。
へぇぇー。
女の子、じゃなくて。
女の子『達』、なんだ…。
へぇぇぇぇぇぇー。
しかも、『随分』って言葉もついてたよね。
ふーん。
無言のままの私に、将の顔色がみるみる青ざめていった。