空を失った青(青空への手紙~君との約束~の番外編)
涙が出そうになったけれど、それをぐっと押し込んで、皆の顔を見渡す。
そこには、真剣な目しかなかった。
だれも、あたしを笑う人なんていなかった。
「あたし、甲子園に行けるっていうことがどれだけすごいことなのか、どれだけ注目されることなのかわかっていませんでした。
先輩方が必死にグラウンドで戦っているのに、あたし、私情をはさんじゃったり、先輩方の足引っ張ってばっかりで……。
真帆みたいに分析に長けている訳でもなし、裁縫もうまくないし、洗濯掃除だって段取り悪し、何かあるとすれば、野球が好きっていうことだけで……
あたしこの場にいても……「それだけあれば十分」」
あたしの言葉を、隣のキャプテンが遮った。
「それだけあれば十分なんだよ。野球が好きって言う気持ちさえあればお前はここにいてもいい。いてもらわなくちゃ困るんだ」
「え……」
「足なんて引っ張られてねぇよ。もし、引っ張っていたとしても、俺らはお前が俺らの足を掴んだまま一緒に前に進んでやる。
俺がお前をこの藤青のマネージャーに選んだんだ。人材を選ぶのは俺の得意分野だからお前はなんも心配しなくていいんだよ。
ベンチで俺らの応援してくれるだけで、もうお前は俺らの背中を押してくれているんだよ」
そういってくれるキャプテンの目がとても優しくて、思わず、頬に涙が一滴伝った。
「青なんて、俺らのことほったらかしにして半年間も眠っていたんだからな?それに比べれば、彩の失敗の1つや2つ、なんてことねえよ」
そういって、辻先輩はケラケラと笑った。
だけど、それを知らなかった1年生は驚いて、一斉に相原先輩の方へ視線が集まる。