叢雲 -ムラクモ-
……一週間が経った。
幸い月曜日に北川と登校したのは見られてなかったらしく、坂上先生も何も言ってこない。
岸田はもちろん、北川とも一言も話してないが、これでよかったのさ。
……合ってるよな? 俺。間違ってないだろ?
「……松ちゃん、いい?」
「あ?」
女の声に振り向けば、バスケ部の部長、何度か北川のことを聞いた中沢がいた。
「どうした」
ここは三年校舎だから会ってもおかしくない。それどころか次の授業は中沢のクラスだ。
「……ゆずちゃんのこと」
どこかためらった様子で、中沢はついてきてと歩き出した。
昼休みだから時間はあるが、どこへ行くのだろう。
着いたのは、体育館前だった。体育館の入口へと続く三段ほどの階段に、中沢は座る。俺も従って、その横に座った。
「ゆずちゃん、さ」
こいつと話すのは本当に北川関係ばかりだと思いつつ、黙って話を聞く。
「最近、部活休んでるんだ。こないだ一回だけ来たけど、ボーッとしてたり転んだり、調子悪くて……。松ちゃん、何か知らない?」
「……知らん」
「ウソだ。松ちゃんウソついてるでしょ」
「なんで」
「ゆずちゃんが部活に支障をきたすほど落ち込むのは、松ちゃんがらみの事しかない」
「だから、なんで」
「いじめられてた時だって、部活には出てた。酷い時は休んでたけど……。
あたしさ、松ちゃんからゆずちゃんの事聞かれるけど、ゆずちゃんからも松ちゃんの事いろいろと聞かれるんだよ」
「……なんて?」
「あたし、ゆずちゃんに比べると二年以上松ちゃんと一緒にいるじゃん? だから、昔はどんなだったとかそういうの」
「ふーん……」
だから、どうした。
とは言えなかった。
「ゆずちゃんがあんなにも落ち込むのは、松ちゃんが何かしたからでしょ」
わかっていることを他人から言われるのは、予想以上に腹が立った。
「……お前に何がわかるんだよ」
「え……うん。二人に何があったかはわからないけど、仲直りした方が」
「ほっといてくれ!」
何も知らないくせに、入ってくるんじゃねえ。
俺は中沢を置いて、その場を離れた。
幸い月曜日に北川と登校したのは見られてなかったらしく、坂上先生も何も言ってこない。
岸田はもちろん、北川とも一言も話してないが、これでよかったのさ。
……合ってるよな? 俺。間違ってないだろ?
「……松ちゃん、いい?」
「あ?」
女の声に振り向けば、バスケ部の部長、何度か北川のことを聞いた中沢がいた。
「どうした」
ここは三年校舎だから会ってもおかしくない。それどころか次の授業は中沢のクラスだ。
「……ゆずちゃんのこと」
どこかためらった様子で、中沢はついてきてと歩き出した。
昼休みだから時間はあるが、どこへ行くのだろう。
着いたのは、体育館前だった。体育館の入口へと続く三段ほどの階段に、中沢は座る。俺も従って、その横に座った。
「ゆずちゃん、さ」
こいつと話すのは本当に北川関係ばかりだと思いつつ、黙って話を聞く。
「最近、部活休んでるんだ。こないだ一回だけ来たけど、ボーッとしてたり転んだり、調子悪くて……。松ちゃん、何か知らない?」
「……知らん」
「ウソだ。松ちゃんウソついてるでしょ」
「なんで」
「ゆずちゃんが部活に支障をきたすほど落ち込むのは、松ちゃんがらみの事しかない」
「だから、なんで」
「いじめられてた時だって、部活には出てた。酷い時は休んでたけど……。
あたしさ、松ちゃんからゆずちゃんの事聞かれるけど、ゆずちゃんからも松ちゃんの事いろいろと聞かれるんだよ」
「……なんて?」
「あたし、ゆずちゃんに比べると二年以上松ちゃんと一緒にいるじゃん? だから、昔はどんなだったとかそういうの」
「ふーん……」
だから、どうした。
とは言えなかった。
「ゆずちゃんがあんなにも落ち込むのは、松ちゃんが何かしたからでしょ」
わかっていることを他人から言われるのは、予想以上に腹が立った。
「……お前に何がわかるんだよ」
「え……うん。二人に何があったかはわからないけど、仲直りした方が」
「ほっといてくれ!」
何も知らないくせに、入ってくるんじゃねえ。
俺は中沢を置いて、その場を離れた。