叢雲 -ムラクモ-
唇を離して、はっと気付いた。
今、気温は下がりつつある。そして俺は水に濡れたままだ。
……寒い。
思わず腕に力を込めた。
「ちょっ……苦しいよ」
「無理……お前を離したら俺は凍死しちまう」
「大袈裟な!」
北川はしばらく俺の腕の中でもがいていたが、しばらくすると諦めたのか大人しくなった。
「離れないと歩けないよ。着替えらんないし、車にも行けな……あ!」
「あ?」
「岸田くんのこと忘れてた!」
「あー……」
そういや、忘れてたな。
着替えて北川と合流し車に向かったところ、
「……ぐー」
岸田のやろー、後部座席で寝てやがった。
「おい、こら」
ロックはかかっていなかったので、ドアを開けて体を揺さぶる。
「ロックぐらいかけやがれ。盗難されたらお前は俺が殺すぞ」
「ぐかー……ぎー……がっ」
「和さん、ロックかかってたら、岸田くんが起きるまであたしたち入れなかったよ」
「すー……ぐ、がー……」
「……それもそうだな」
「う、ぴー……くー」
「うるっせえな、さっさと起きやがれ!」
頭を一発殴ってやると、岸田は間抜けな声を出して目を開けた。
「はっ、ここは……。あ、変な男が見える! 俺は松ちゃんの車と一緒に誘拐されちまったのか!」
「おーい。もう一度殴って欲しいのか? 変な男イコール俺イコール松村和ですが?」
「げ……。よ、よお。遅かったな松ちゃん、北川! いやー俺は待ちくたびれ……」
「よだれを今すぐ拭け。俺の車が汚れる」
「ったく、盗難されたらどうなってたことやら。俺の車が無事でよかったぜ」
「あのね岸田くん。和さんは、ああ言うけど、ホントは車よりも一緒に連れてかれるであろう岸田くんを心配してたんだよ」
「余計なことは言わんでいい!」
今、気温は下がりつつある。そして俺は水に濡れたままだ。
……寒い。
思わず腕に力を込めた。
「ちょっ……苦しいよ」
「無理……お前を離したら俺は凍死しちまう」
「大袈裟な!」
北川はしばらく俺の腕の中でもがいていたが、しばらくすると諦めたのか大人しくなった。
「離れないと歩けないよ。着替えらんないし、車にも行けな……あ!」
「あ?」
「岸田くんのこと忘れてた!」
「あー……」
そういや、忘れてたな。
着替えて北川と合流し車に向かったところ、
「……ぐー」
岸田のやろー、後部座席で寝てやがった。
「おい、こら」
ロックはかかっていなかったので、ドアを開けて体を揺さぶる。
「ロックぐらいかけやがれ。盗難されたらお前は俺が殺すぞ」
「ぐかー……ぎー……がっ」
「和さん、ロックかかってたら、岸田くんが起きるまであたしたち入れなかったよ」
「すー……ぐ、がー……」
「……それもそうだな」
「う、ぴー……くー」
「うるっせえな、さっさと起きやがれ!」
頭を一発殴ってやると、岸田は間抜けな声を出して目を開けた。
「はっ、ここは……。あ、変な男が見える! 俺は松ちゃんの車と一緒に誘拐されちまったのか!」
「おーい。もう一度殴って欲しいのか? 変な男イコール俺イコール松村和ですが?」
「げ……。よ、よお。遅かったな松ちゃん、北川! いやー俺は待ちくたびれ……」
「よだれを今すぐ拭け。俺の車が汚れる」
「ったく、盗難されたらどうなってたことやら。俺の車が無事でよかったぜ」
「あのね岸田くん。和さんは、ああ言うけど、ホントは車よりも一緒に連れてかれるであろう岸田くんを心配してたんだよ」
「余計なことは言わんでいい!」