叢雲 -ムラクモ-
「す、すみませんでした!ねえミキ、諦めてお祭り行こ?」
「全く、エリは分かってないなー。男連れずにお祭り行って、なんの価値があるのさー」
「わたしと楽しめばいいでしょ!」
「まあ、いいけど。じゃ、さようならー!」
慌ただしく、ミキとかエリとかいう二人の女は去っていった。
『エリ』がつまずいて『ミキ』に支えられているのを最後に、俺は二人から視線をはずす。
また下駄の音がして、近くにいたカップルがその場を離れた。
開けた視界にうつったのは慣れない下駄でこちらに走ってくる北川の姿だった。
「は、はぁっ……ご、ごめんなさ……!」
「いや、いい」
息も切れ切れに、北川は俺の前に立って顔を上げた。うすく化粧がしてあった。
「和さん、待ったでしょ」
「ああ、待った。逆ナンされた」
「え!?」
ものすごく驚いたように目を丸くする北川。
それを見てふっと笑い、いつもより少しだけ高い位置にある北川の頭に手をおいた。
「……浴衣、似合ってる」
「似合ってなかったら困るよ……。これ着付けるのに時間かかったんだもん」
「ところでさ」
「?」
「お前、親になんて言って来たんだ?」
「『友達とお祭り行ってくる!』って」
……ベタだな。
「和さん、あれ、あれしよう!」
「は? 金魚すくい?」
「うん!」
今日の北川はありえないくらいテンションが高く、早くも下駄に慣れたようで、俺の腕を引っ張ってあっちへこっちへせわしなく跳ね回っている。
「全く、エリは分かってないなー。男連れずにお祭り行って、なんの価値があるのさー」
「わたしと楽しめばいいでしょ!」
「まあ、いいけど。じゃ、さようならー!」
慌ただしく、ミキとかエリとかいう二人の女は去っていった。
『エリ』がつまずいて『ミキ』に支えられているのを最後に、俺は二人から視線をはずす。
また下駄の音がして、近くにいたカップルがその場を離れた。
開けた視界にうつったのは慣れない下駄でこちらに走ってくる北川の姿だった。
「は、はぁっ……ご、ごめんなさ……!」
「いや、いい」
息も切れ切れに、北川は俺の前に立って顔を上げた。うすく化粧がしてあった。
「和さん、待ったでしょ」
「ああ、待った。逆ナンされた」
「え!?」
ものすごく驚いたように目を丸くする北川。
それを見てふっと笑い、いつもより少しだけ高い位置にある北川の頭に手をおいた。
「……浴衣、似合ってる」
「似合ってなかったら困るよ……。これ着付けるのに時間かかったんだもん」
「ところでさ」
「?」
「お前、親になんて言って来たんだ?」
「『友達とお祭り行ってくる!』って」
……ベタだな。
「和さん、あれ、あれしよう!」
「は? 金魚すくい?」
「うん!」
今日の北川はありえないくらいテンションが高く、早くも下駄に慣れたようで、俺の腕を引っ張ってあっちへこっちへせわしなく跳ね回っている。