バスケ馬鹿にホレたバカ。
―――――あの日からもう2ヶ月が経つ。
あたしと廉の関係は順調そのもの。
麗にはあれからも、何度か呼び出しを食らっていたけど、
そのたびに無視ばっかのあたし。
でも…。
『明日、絶対に屋上来て。
廉のことで話あるの』
そうメールで送ってきた。
廉の事って言われたら、さすがのあたしも行くしかないと思った。
学校に行き、ボーっとしながら時が過ぎるのを待ってから
屋上に行った。
ギィッ…
重たい手つきで屋上のドアを開けると麗はもういた。
「話って何。」
「やっぱ来た。…廉とまだ付き合ってんの?」
「だから?麗に関係ないし。どうでもいい話なら帰るし」
あたしがそういった瞬間、麗が叫んだ。
「あたしね!廉が好きなの…。今度告白するつもり」
「は…?」
廉のことを好き…? 告白する…?コイツ、何言ってんの?
「だから…別れて。」
「は?…わけわかんない。何でアンタに指図されないと
いけないわけ?」
だいたい、何で今更?
あの日からもう、2ヶ月だし。
「…廉と付き合いたくて、マネージャーになった。
少しでも、廉の近くにいて、支えたかったから。」
「・・・。」
「でも…!アンタに廉を取られた。 何で…!?
何で廉なの…」
麗は泣いているのかかすれ声で問い詰めてきた。
さすがのあたしもここまで言われたら言い返せれない。
「廉のこと、諦めてよ。廉だって夏帆なんかと一緒で
楽しいわけないじゃん」
麗がそういった瞬間。
あたしの中で何かが大きな音を立てて崩れた。
「あー。もういいよ!別れりゃいんでしょ!?
勝手にラブラブしとけば!?」
あたしはそう叫ぶと
バンッ!
と屋上を飛び出した。
そのまま走り続けて、誰も使っていない
空き教室に入った。
ドアを閉めて壁にもたれかかって、口に手を当てた。
「…っ…っく…ゴメン…廉…っく」
泣きたくなかったのに。
自業自得なのに。
涙があふれて止まらない。
「…っ…うぅ…っ」
サイテーだ…。自分も傷つけて、廉のことも傷つけた。
もう嫌になっちゃうよ…。
ゆっくりとスマホを制服のポケットから取り出して
メールの画面を開く。
――――――――――――――――――――――――――――――
送信:To.廉
廉…。ゴメン.
あたしと別れて…。
自己中で、ホントにゴメンね?
――――――――――――――――――――――――――――――
ポタッ… ポタッ…
「…っ。別れたく…っ…ない…よ…」
スマホのディスプレイが涙で濡れてゆく。
あたしは最後に『好きな人ができた』と付け足した。
――――――30分後。
目が少し腫れているけど
授業に戻ることにした。
ガラガラッ…
ドアを開けると皆が一斉にこっちを見た。
先生は―――… いなかった。
「何。どうしたの?」
あたしがそういうと友達の広瀬姫衣が口を開いた。
「廉…」
「…え」
「廉が、夏帆のこと探しに来た。」
ドクンッ…
「そ、そうなに?」
本当は心臓が破裂しそうな位バクバク言ってたけど
平然を装った。
「夏帆、行かなくていいの?」
「何で?いいよ行かなくて」
行ったって、いろいろ問い詰められるだけだから。
「行かなきゃダメなんだよ。」
「何で?」
「夏帆…廉の彼女なんでしょ?」
ドクン…
ちがう…。あたしは廉の彼女なんかじゃない…。
「夏帆、行きなよ」
何で行かなきゃなんないの…。もう関係ないんだよ…。
「夏帆!」
「うるさい!」
「・・・!?」
苛々が…募りすぎた。
あたしはそのまま教室を飛び出し、
さっきまでいた空き教室に駆け込んだ。
「ゴメン…。姫衣。キツイいい方して…っ」
ガラガラッ!
「!?」
何分たただろう。
大きいドアを開ける音とともに目が覚めた。
「夏帆…!」
「廉…。」
廉だった。
「お前、何で別れるとか言ったんだよ」
廉の眼は今までとは違う。
…真剣な目だった。
「好きな人できたって言ったじゃん。」
「そんなの、信じらんねぇ。ウソだろ」
「…っ。何で…かな…。廉には、ばれちゃうんだろ…」
涙が頬を伝って、そのまま弾けた。
「なんでだよ。何で嘘なんかついたんだよ」
「いいの。もう、廉には関係のないこと。」
あたしは立ち上がり、すたすたと歩いて家に帰った。
途中、廉に手をつかまれたり、抱きしめられたりしたけど
全部振り払って…。