シフォンケーキにラズベリーソース。
あなたがいる。私のそばに。
退院した私に、彼は私の大好きなシフォンケーキを買ってきてくれた。
「ありがとう」
私がそう言うと、彼は嬉しそうに笑った。
シフォンケーキに少しかかってあるラズベリーソース。
それを軽く舐める…。
「ラズベリーソース…甘酸っぱさが『恋』みたい…」
私のそんな呟きに、彼はこう答えた。
「じゃあ、俺とお前の関係は、このシフォンケーキだな。
ふわふわしてて、やわらかくて、安定しないようで、安定してて…。
そこまで甘すぎない甘さ。
だからこそ飽きない。
これが『愛』なら…
お前とあの男の『恋』だとか…
過去の『傷』、これから先もきっとある『辛いこと』…
それらはシフォンケーキにかかってる
ラズベリーソース程度のものだよ」