鈴芽 ~幸せのカタチ~
スズメに繋がっていたたくさんの管がはずされていた。

でもスズメの意識は戻っていなかった。

『峠は越えたと思いますが、あとは本人の意識ですね。』

医者はそう言って、まるでスズメが生きようとしていない
みたいな言い方だった。

イチローはどうしてもスズメの顔が見たくて、
よく夜の病室に忍び込んでいた。

峠も越えたということで、スズメのご両親も
夜は家に帰っていた。

スズメはまるで寝ているようだった。

ちょっとゆすったらすぐ起きそうなのに
どうして起きないのか。

『スズメ。スズメ。帰っておいで。

お願いだから。』

ゆすっても、手を握っても、
何をやっても目を覚まさない。

『スズメ。愛してるよ。』

イチローはそっとキスをした。

『また来るからな。』








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