鈴芽 ~幸せのカタチ~
『スズメは自分の名前だからって、
鳩じゃなくてスズメにばっかり餌を
やろうとしてたんだ。』

夜、イチローはまたスズメの病室にいた。

手を握り、毎晩イチローとスズメが
出逢った日からのことを語っていた。

『自分は名前どおりスズメそのものだって言ってな。

人間がいなきゃ生きていけないくせになかなか
なつかないんだって。

しかも穀物食べるから農民に嫌われてるし、
でも害虫も食べるからたまにちやほやされて

利用されてるだけだって。

あのときのお前はずいぶんひねくれてたよなあ。

ひねくれてるのは今もだけどな。』

スズメの頬を軽く手で覆い、
唇に親指をあてた。

『悔しかったら早く起きて言い返せよ。

イチローって呼べよ。

イチローって呼ぶのお前だけなんだから。』

そしてまたそっとキスをした。

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