鈴芽 ~幸せのカタチ~
会社の前に座り、ただずっと入り口を見つめていた。

一応受付で、"鈴木"という人がいるかどうか聞いたが、
鈴木はたくさんいた。

私はオジサンの下の名前すら知らない。

ウォークマンを持ってきてて良かった。

音楽を聞き出して、五曲ほどがすぎたとき突然、右手のイヤホンが誰かに引っ張られた。

『コラっ』

えっちゃんだった。

一瞬オジサンかと期待してしまった。

『帰ったんじゃ?』

『誰が帰るって言った?
おにぎりとサンドイッチ買ってきたよ。

ついでにお菓子もいっぱい買ってきた。

長丁場になりそうだしね。』

嬉しくて涙が出そうだった。

『ありがとう。
ありがとう。』

ねぇ、オジサン。

私友達ができたの。

何でも相談できる友達。
オジサンにも紹介したいよ。

早く、姿を現して。
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