Century Plantが咲く頃に
「お掃除が終わりました」
私は、頭を下げて家を出た。
自分の家に帰る。
家で充電をし、起きたらまた違う家で家事をする。
家政婦ロボット。
でも今日は、バスを途中で降りた。
外はまだ明るい。
遠くで夕焼けが見える。
どこに向かうのか、自分でもわからなかった。
ただ。
そうしないといけない気がした。
こんなことは初めてだけれど、だからどうということもない。
「わぁ、綺麗‼」
前の人間が空を見上げて、騒いでいる。
私も空を見た。
夕焼けだろうか?
夕焼けを綺麗と人間は言うけれど、私にはわからない。
少し眩しくて目を細めると、なにか黄色いものが見える。
視線を落とす。
緑色した植物が、とても高く生えている。
「リュウゼツラン?」
口にしてみると、胸の奥が痒くなった。
私には、心臓なんてないのに。
「…リュウゼツラン」
口にすると、今度は体が熱くなる。
私には、心なんてないのに。
故障だろうか?
こんなところで。
先月、メンテナンスに出してもらったばかりなのに。
私は再び、緑を追いかけながら、空を見上げた。