Century Plantが咲く頃に
隣で女が泣いている。
泣き声じゃなく、鳴き声じゃないかと思うほど、絶妙な音量で啼いている。
考えうる全うな理由はこの際、置いておこう。
それくらい、僕は暇だった。
初めてのデートの待ち合わせ時間から、ゆうに二時間経っているにもかかわらず、まだ望みを捨ててないくらいに暇だった。
要は、諦めが悪いんだ。
そりゃ、僕だって、あんな大学のミスなんとかに選ばれる相手と付き合えるだなんて思っちゃいない。
それより。
この子のほうが、何倍も綺麗だ。いや、フラれた腹いせを差し引いても、女の涙は、美しさを引き立てるのか?
ああ、そうだ。
どうして泣いているのか。その理由を突き止めなくては。
お金を落とした?にしては、身綺麗だ。
目にゴミが、花粉の類いが混入したとは考えられないか?
うん、我ながら、いい線をいっている。
ここは待ち合わせで有名な場所だ。僕たち2人の間にも、そびえ立つ植物が。きっとこの葉っぱかなにか…。
いや。
やっぱり、フラれたんだろう。
それが健全であり、全うだ。
僕はいい。しがない大学生だ。しかし、彼女はまだうら若き乙女。その傷は計り知れないはず。
僕は一つ咳払いをして言った。
言わずにはいられなかったんだ。
「あの、大丈夫ですよ。それだけ綺麗なら」