Century Plantが咲く頃に
泣き声がやんだ。
彼女は、僕を見上げた。
背が高いだけが取り柄の僕を、探るように見る。
あゝ、失敗した。
僕は、人と密に関わるのが嫌いなんだった。それなのに、どうしてあんな戯言を言ってしまったんだろう?
同情ではない。
優劣でも損得でも、愛情でもない。
「じゃ」
思ったより幼い声だった。
「じゃ、私を口説いて」
少女の声から放たれた艶が、僕の胸をうった。
口説く口説く…。
一つだけ確かなことは、僕の辞書にはない。どれだけ検索しても、webにもない。
君の黒髪に吸い込まれそうだ、は、どこかストーカーちっくだし、その潤んだ瞳に吸い込まれそうだ、は、なんだか痛そうだし。
第一、口説くってなんだよ。
説教なら得意なんだけど。
女を口説き落とすなんて、僕にできるわけがない。でも、彼女は、僕から目を離さない。その潤んだ瞳で。
また泣くんじゃないか?
そして、野次馬根性さながらのお節介を焼いて、じゃ口説いてという、永遠のループに陥る。
それならいっそ…。
「こ、この植物に花が咲いたら、僕と付き合いませんか?」
ん?なんだこれ?