Century Plantが咲く頃に
我ながらひどいなと思った。
2人して植物を見上げる。緑の、無愛想で無骨な、名も知らぬ植物。でもほら、今にも可愛らしい花が咲きそうじゃないか。
すると、別の花が咲いた。咲き誇った。
「あなたこの植物なにか知ってるの?」
そう尋ねながら、彼女が笑ったんだ。
さらに幼く見える。
まだ、高校生だろうか?
「いや、自然を愛でる習慣がないので」
「これはCentury Plant。別名リュウゼツラン」
「リュウゼツラン?」
「そう、竜の舌に似ているから竜舌蘭」
ほう。
そういわれれば、見えなくもない。小さいヤシノキと勘違いしていたのは、この際、黙っておこう。
「竜舌蘭は、100年に一度しか花を咲かさないのよ」
「えっ…」
「私、遠回しにフラれたってことね。それも、ひどく遠回しに」
それでも笑っていた。
どんな花より、魅力的な笑顔。
「でもあれだよ、明日がその100年目かもしれない」
「随分な希望的観測」
「僕は楽天家なんだ」
「それなら」
話を遮るような強い物いいで。
「一年後の今日、また私を口説いて」
「一年後?」
「同じ口説き文句で、私を口説いて」
真っ直ぐな瞳が、僕の心を射る。フラれたことなんて、忘れてしまうほど。
「うん、わかったよ」
「じゃ、一年後ね」